産地・造り方の特徴
麦焼酎は、麦を主原料とした焼酎で、主に長崎県の壱岐島、大分県などで造られています。
大麦は、六条大麦と二条大麦の2種類がありますが、麦焼酎に使われる麦は、一般的にビールと同じ二条大麦です。二条大麦は、麦茶などに使われる六条大麦に比べて粒が大きく、デンプン価が高いため、麦麹の製造に適しています。
二条大麦(以下「大麦」)は、米と比べて外側に油分を多く含むため、外側の35%程度を精麦し(精麦部合65%)、焼酎製造に用います。また、米より水を吸いやすく、粒同士がくっつきやすいため、水を吸わせて蒸す際には注意が必要です。
麹原料は、壱岐島では米を、大分県では麦を使います。麹菌は、黒麹菌や白麹菌を使うのが一般的です。
1次醪で酵母を十分に増殖させた後、蒸した大麦を加えます(2次醪)。2次醪は、最高温度28〜32℃で、11〜14日発酵させると、アルコール分16〜18度になります。
壱岐島、大分県ともに常圧と減圧、両方の蒸留方法で蒸留されますが、両者の個性を生かすために、ブレンドされる場合もあります。
歴史
麦焼酎は壱岐島が発祥の地といわれています。壱岐島は、九州と朝鮮半島の間にある島で魏志倭人伝にも登場し、古代から文化と物資の重要な輸送ルートでした。壱岐島は平坦な地形で、米麦や果物の栽培のほか、壱岐牛や玄界灘の海の幸にも恵まれた豊かな島です。
壱岐島では、江戸時代後半には年貢から除外されていた大麦で自家用の焼酎がつくられていたのではないかと考えられています。
昭和の初めまでは清酒用の黄麹菌を使用し、酒母を造り米麹と蒸麦を三段に仕込むという清酒型の仕込みを行っていました。1941年から、焼酎麹で1次仕込みを行い、蒸した麦を2次や3次仕込みに使う方式に改められると同時に、黒麹菌の使用が始まり、その後白麹菌が多く使われるようになりました。蒸留は、伝統的には常圧蒸留ですが、近年、減圧蒸留を用いた製品も造られるようになりました。
大分県では、江戸時代に焼酎製造が行われていたものの、原料は酒粕でした、本格的に麦焼酎の製造に取り組み始めたのは、1951年に麦の統制が撤廃されたことに端を発します。この地方では、昔から麦麹で味噌を作っていたことがヒントになったようです。「大分麦焼酎」を特徴付ける優れた麦麹が開発されたのは、1970年大のことです。それ以降、減圧蒸留、冷却ろ過、イオン交換処理など新しい技術を取り入れて、癖がなく、華やかな香りで飲みやすいライトタイプの麦焼酎が造られるようになりました。
最近では、技術の向上やし好の変化もあり、香ばしい麦の香りと旨味がある特徴ある製品も製造されています。また、はだか麦や六条大麦を原料とする方法や、ビールの麦芽のように麦をローストして仕込む方法などもあります。
香味の特徴
麦焼酎の風味は麦特有の香りがあり、まろやかで甘味を感じるのが特長です。製造方法により風味に差がありますが、減圧蒸留タイプは風味が軽快で、常圧蒸留タイプは、香ばしい麦の香りと味が調和しているなど特徴が良く現れます。タイプにもよりますが、お湯割りや水割りなど様々な飲み方ができるのが特徴です。